2月28日(土)、一般向け学習講座「熱海市伊豆山土石流災害―被災地はいま―」を開催いたしました。
発災から4年余りが経過し、幅広い世代に人気の観光地としてにぎわいを見せる熱海市ですが、現在も土石流災害の影響により、避難生活を続けている世帯があります。
発災時から昨年まで、熱海市の保健師として、また熱海市ささえ逢いセンター副センター長として被災者支援に携わってこられた前川美奈子氏(現在は、熱海市社会福祉協議会に在籍)と、静岡県被災者支援アドバイザーとして官民の情報共有や、被災者支援に尽力されている鈴木まり子氏にご登壇いただき、対話形式で熱海市伊豆山の現在と復興への歩みについてお話しいただきました。
前川さんたち職員は、被災者への丁寧な聞き取りを重ね、整理や区分を行いながら、きめ細やかな支援を続けてこられました。コロナ禍でもあり3か所のホテルが避難所となりましたが、食事や寝具が整いプライバシーが守られる反面、被災者とコミュニケーションを取ることの難しさもあったそうです。ただ、伊豆山地区は住民同士のつながりが強く、普段の顔が見える関係性が助けになったとのこと。いざという時に瞬時に助け合うことができる地域力があるかどうか、日頃から考えておく必要性について強く伝えられました。
続いて鈴木さんからは、被災された方々との関わりを絶やさないための居場所づくりや話し合いの場づくりなど、地域に寄り添った支援活動が紹介されました。
その後は、お二人の対話を通して、伊豆山の現在の様子や被災された方々の心情が、さまざまな事例を交えて語られました。4年を経て、市外での生活になじみ「元気に暮らしているよ」と連絡をくれる方もいれば、現在も河川や道路の工事を待ち、これまでの場所に戻りたくても戻れない方がいる現状にも触れられました。悲しみが癒えないご遺族の方もいらっしゃるため、一人ひとりの状況が異なることを日々感じているそうです。
伊豆山の方々の生活再建の状況をお聞きしたことから、「どこで暮らしていくのか、決心するまでの期限はあるのか」という質問も寄せられました。伊豆山土石流災害の場合、現在も交渉段階にあり、話し合いが進んでいない部分もあるそうです。ただ、鈴木さんからは、熱海に限らず「被災者の背中を押すためには、期限が必要な場合もある」という、長く対話を重ねてきたからこその言葉があり、多くの参加者がうなずいていました。
同じ静岡県内で発生した土石流災害には、当時大きな衝撃を受けましたが、現在の伊豆山の様子や、被災された方々の心情やその変化についてお聞きする機会は多くありません。締めくくりにお二人から伝えられた「一人ひとりの人間としての復興」という言葉と、これからの被災者支援への思いを受け、参加者からは「ハード面ではなく、人や地域が大切だと感じた」という声も聞かれました。復興とは何かを深く考える時間となりました。